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楽水庵ブログ 2018年7月

長距離ランナーとよく似ているボート選手の肋骨骨折

こんにちは、「キネシオ ローイング インストラクター」(キネシオテーピング協会認定ボート競技専門指導員)
京都府長岡京市のスポーツ整体院 楽水庵の水谷です。

少し前にボート選手の肋骨の痛みについて書きましたが(リンク)今回はそれに関連して。

ざっくり繰り返すと、前鋸筋という脇の筋肉の機能が低下した状態でローイング動作を繰り返すと、フィニッシュので腕を引いた状態で前鋸筋が引っ張られ、そうすると肋骨も引っ張られて最悪の場合剥離骨折してしまいます。
何故なら、フィニッシュの動作が前鋸筋のストレッチポジションになるからです。
ストレッチポジションと言っても状態が良ければ引っ張られません、ただ緩むだけです。
緩まず固く引っ張られるのでそういう状況になってしまうのです。


そして、このリスクは練習量に比例するようです。
これも繰り返しますが、圧倒的に大学のボート部員に発症例が多いですね。
マスターズや中高生ではあまり聞きません。
圧倒的に練習時間が長いせいだと思われます。

そう考えた時に思い出したのが、数年前ウルトラマラソン前に肋骨骨折をされた女性。
当時は気管支炎を患ったまま走り込みをして、痛いのをストレッチングで何とかしようとして負ったものだと思っていました。
もちろん気管支炎の影響はあったのでしょうが、今から考えると折った側(右)の前鋸筋の状態が良くなかったのでしょう。

個人差はありますが、ランニングで腕を引いた時のポジションはボートのフィニッシュとよく似ています。
この引いた際に前鋸筋が突っ張り、結果肋骨が引っ張られる、それも距離を伸ばすとリスクが高まります。

また、これは余談ですが、かなり前にフィギュアスケートの安藤美姫さんがジャンプのせいで肋骨を骨折した事がありました。
どちらを折ったかは覚えてませんが、おそらく回る側だと考えられます。
というのは回転する際にグッと肘を後ろに引きますから。
多分この場合は、回数というよりも強度だったのだとは思いますが。

それでも、このように肘を曲げて腕を後ろに引く動作というのは、前鋸筋の本来の機能(肘を伸ばして手を前に押す)がしっかりできていないと競技によっては肋骨骨折を引き起こすリスクが高いと言えるでしょう。

競技志向が強ければ強いほど更にリスクは高まります。

*あくまで個人の感想です
*効果には個人差があります。


楽水庵

エルゴは大丈夫だが、乗艇(スィープ)すると腰が痛い

こんにちは、「キネシオ ローイング インストラクター」(キネシオテーピング協会認定ボート競技専門指導員)
京都府長岡京市のスポーツ整体院 楽水庵の水谷です。

ある大学ボート部の男子のケースです。

彼は昨年腰椎ヘルニアを発症し、その直後から定期的に通ってくれています。
腰の方はだいぶ良くなって普通に漕げるようになっていたのですが、1週間ほど前から結構腰が痛くなった模様。

状態はというと、乗艇すると痛いのだがエルゴメーターを漕ぐのは大丈夫。
種目はフォアでスィープ(一人が1本オールを持ち片側だけ漕ぐ)のバウサイド(自分から見て左側を漕ぐ)種目です。
スィープはスカル種目(一人が両手に1本ずつオールを持ち両側を漕ぐ)と違い上半身の回旋が伴います。

エルゴで大丈夫なのだがスィープ艇を漕ぐと腰が痛い、という事は回旋する筋肉のどれかが機能低下している可能性があります。
そこでチェックしてみると右の胸最長筋という背中のインナーマッスルが機能低下していました。

右胸最長筋というのは、身体を背屈しながら
右側に回旋させる筋肉です。
逆にストレッチポジションは、身体を前屈させながら左に回旋です。
まさに、バウサイドを漕ぐ彼にとってはダメージが大きいですね。

しっかり調整しておきましたので、乗艇しても痛みは出ない筈です。


*あくまで個人の感想です
*効果には個人差があります。

楽水庵

やっぱり「再生屋」に!1年3ヶ月ボートどころか日常生活にも・・・

こんにちは、「キネシオ ローイング インストラクター」(キネシオテーピング協会認定ボート競技専門指導員)
京都府長岡京市のスポーツ整体院 楽水庵の水谷です。

最近私は自分の立ち位置を考えています。
スポーツをされていない皆さんの施術も勿論させていただきますが、自分の目指す処は何なのかを漠然とではありますが思い描いています。

そして、トップアスリート・ジュニア・マスターズを含めて私が一番大事にしたいのは、「やりたいのだが、痛み等の問題で(全く)できない」という方達に、レベルの差はあれどまた競技に戻っていただく事です。

ですから、本格的に「再生屋」を目指していこうと思っています。

そんな中で、本当に偶然が重なり通っていただいているマスターズの男性の例を紹介させていただきます。

この方は私と同年(今年で57歳)でT外大OB、学生時代に戸田でボートを漕いでおられました。

卒業後ボートから離れておられていましたが、何校かの大学ボート部OBが集まって設立したマスターズクラブに入って再開されていました。

ところが、1年3ヶ月ほど前にひどい腰痛を発症、ボートを漕ぐどころか日常生活でも身体を動かすと「怖さ」があるほどでした。

共通の知人から紹介され、6月に行ったセミナーに参加された際にモデルになってもらい少し調整したところ、それが功を奏したようで腰が楽になられ、そのまま通っていただく事になりました。

2回目に来られた際に普段の生活での「怖さ」はなくなったみたいだったので、施術後にエルゴメーターを漕いでもらいました。
自らエルゴメーターを漕ごうとされたので安心感はあったようです。

ただ、漕いだ際に身体を後ろに飛ばすのにはまだ怖さがありました。





その後私も後で知ったのですが、実際にボートを漕がれました。
もちろんボチボチとはですが、本当に楽になっていなければ漕がれないでしょう。

その1週間後(前回から2週間後)。
更に状態は改善されていたので、また施術後にエルゴメーターを漕いでもらいました。

すると、下の画像のようにダイナミックに漕ぐ事ができました。



2週間前とは全然違います!!

まだテーピングなしでは辛い部分もありますが、私が予想していたよりもずっと早いペースで回復されています。
秋ぐらいに本格的にボートに復帰できればと考えていましたが、あまりにも早いので今本格的にボートに復帰されたら熱中症を心配しなければいけませんね(笑)

本当に私が本領発揮するのは、こういった故障で競技になかなか戻れない方々に対し、速やかに戻っていただ蹴るようにする事でしょう。
だから、「再生屋」としてこれからも頑張っていきたく所存です。

*あくまで個人の感想です
*効果には個人差があります。


楽水庵

「ボート選手の肋骨の痛みについて」を書こうとした矢先・・・

こんにちは、「キネシオ ローイング インストラクター」(キネシオテーピング協会認定ボート競技専門指導員)
京都府長岡京市のスポーツ整体院 楽水庵の水谷です。

先週に戸田へ車で行った事やワールドカップサッカーやらで結構ブログの更新ができていませんでした(^_^;)

さて、先週戸田へ行った際に寄った大学で「肋が痛い選手がいる」との事で、そのアプローチをアドバイスしようと思っていたのですが、生憎その選手が都合が付きませんでした。

その代わりと言っては何ですが、大学の合宿所でのセミナーが終わってから腰痛で悩んでいる選手2名から相談があり、翌日戸田で私が拠点にしているシェアハウスに来てくれました。

腰痛の悩みだったのですが、2選手共に腰痛が改善し練習強度が上がると今度は肋骨を傷めるリスクがありました。
調整をすると同時にアドバイスもさせてもらいました。


私が現役で漕いでいた頃はあまり「ボート選手の肋骨骨折」は聞いた事がありません。
どうも「ビッグブレイド」が普及した頃から増えだしたようです。
確かにビッグブレイドは水をしっかり掴めます。
私みたいに30数年ぶりに漕いだ者でもキャッチしっかり掴めましたから。

しかし、その分身体に負担が掛かってしまうようです。
では、どこに一番負担が掛かるか?
ずいぶん考えましたが、やはり「前鋸筋」という脇、胸の筋肉の横にある筋肉の機能低下が最重要です。

前鋸筋は、下の画像のように肘を伸ばして腕を真っ直ぐ前に押し出す筋肉です。




別名「ボクサー筋」とも呼ばれています。
ボクサーの脇の筋肉が発達しているのはそういう理由からです。

そしてこのストレッチングポジションが画像のような形です。






これは正しくボートのフィニッシュのポジションですね。
前鋸筋の状態が良くないと、このストレッチングポジションの時に筋肉が固くなり、かつローイングではこのポジションを取る回数が圧倒的に多い。
練習量の多い大学ボート部員なら尚更です。

単に骨が弱いのなら、マスターズでやっておられる皆さんの方が肋を傷める事が多い筈です。

しかし、私の知っている範囲では、腰や肩を傷めている方は多いけれど肋を傷めている方はおられません。
これは強度は置いておくとして、やはり反復回数の量ゆえと言っていいのではないでしょうか?

そして、ボート選手の肋骨を傷めるポイントは、大体下の図の通りです。




肋骨下部と、背面の季肋部に集中しています。
季肋部の「季」というのは「一番下」という意味だそうです。
前鋸筋と季肋部は動きが繋がっています。
ですから、前鋸筋の機能が低下していると季肋部の動きも悪くなり、ローイングの反復運動で最悪「剥離骨折」になってしまいます。

と、ここまで書こうと思ってた矢先に、病院実習で忙しかった医大のボート部員が久しぶりに来院。
今日も以前のように腰や膝かなと思っていたら、何とそれこそ「肋が痛い」との事。
あまりにもタイムリーです!!

先ほどの図を見せたら納得してました。
彼女が痛めていた部分は左肋骨下部。
仰向けで起き上がると結構痛みが出るようです。

検査してみると、左前鋸筋の機能が低下していました。
前鋸筋及び季肋部にテーピングし、更に首や肩の調整を左右共に。
患側は左ですが、ご存知の通り肋骨は左右繋がっています。
ですから、右の肩甲骨周りの調整をしても左肋骨の痛みは減少していきます。
肋骨全体を一つの「ユニット」としてみた場合、やはり反対側の動きも良くするべきと思います。

調整を終え、最後にエルゴを引いてもらいました。
エルゴを引くと少しは痛みがあるそうですが、仰向けで起き上がったりゴロゴロしたりする際の痛みはほとんど出なくなりました。
そこで、エルゴの途中で左前鋸筋のエクササイズを少しやり、再度引いてもらうと更に痛みは減少。

このエクサイサイズというのは、相撲でいうところの「テッポウ」です。
肘を少し曲げた状態で、掌を真っ直ぐ肘を伸ばしながら押します。
空手の付きやボクシングのストレートパンチでも良いですね。
現に戸田で前述の大学生を調整する前にお越しになったキックボクサーの方は、普段からパンチングをされているせいか前鋸筋に全く問題はありませんでした。
ただ、突きやパンチは「上肢の回旋」、つまり腕を回しながら行うという動作が伴い、前鋸筋以外の筋機能も必要になってきます。

そういう訳で、ここは「テッポウ」の方がローイングの前後に行う補強運動に向いていると感じます。
壁や柱に向かって脇を意識しながら「グングン」と押します。
これによって前鋸筋の機能が回復するとローイングにおける肋骨骨折のリスクは減少するでしょう。

最後に蛇足かも知れませんが、ボート選手の肋骨骨折は上の図のように肋骨下部と季肋部周辺です。
しかし、ウエイトリフターは第1肋骨の疲労骨折が多いようです。

この違いは、肋骨の引っ張られる方向がウエイトリフティングは鉛直方向、つまり上に引っ張られるのに対しローイングでは水平方向だからと考えられます。

これを読んでくださったボート関係者の皆さんにこのブログが少しでも役に立つのなら嬉しく思います。

*あくまで個人の感想です
*効果には個人差があります。


楽水庵


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